そこにあったもの

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子どもを寝かしつけて、夫の寝息を確かめてから、そっとスマホを手に取った。今日は写真フォルダをしっかり見てみることにした。

仕事での写真、出かけたときの写真、家族の写真。スクロールすればいろんな瞬間が並んでいる。おかしいと感じるようなものは見当たらない。

「LINEではやり取りするのに、写真は撮らないんだろうか?」
「いや、そんなことはないはず。…徹底して撮らないようにしている?」

指先を動かしながら、頭の中ではいろんな考えが巡る。子どもの小さかった頃の写真が出てきて、そのときの記憶まで呼び起こされる。あの頃、夫は何をしていたんだろう。私はどんな気持ちで過ごしていたんだろう。

感傷に浸っていては効率が悪すぎる、と我に返る。今日は情報収集だと決めていたのに。

さらにスクロールを続けると、見慣れない「非表示」という項目が目に留まった。私は今まで使ったことがなかったから、こんな機能があるとは知らなかった。恐る恐るタップすると、パスコード入力画面が出てきた。

夫がよく使うパスコードを入れると、画面が展開した。瞬間、目に飛び込んできたのは女性の写真。画面いっぱいに広がったその姿を見た途端、全身が凍りつき、吐き気と震えが同時に襲ってきた。

「やっぱり…」と思う気持ちと、「見たくなかった」という感情が入り混じる。写真がないはずがないと頭では予想していたのに、いざ目の前に突きつけられると、心は追いつけない。

それでも冷静にならなければと思う。ここで感情に飲み込まれてしまっては意味がない。写真があるとわかった、それだけでも今日の収穫だ。

問題は、どうやってこれを自分の携帯に残すか。一枚ずつ画面を撮るのは現実的じゃない。数が多すぎる。方法を調べなければならない。

私は深呼吸をしてスマホを閉じ、何事もなかったように枕元へ戻した。夫の寝息は変わらないリズムで続いている。そんな中、自分だけが暗闇で立ち尽くしている気持ちになった。

今夜は「非表示フォルダに女性の写真がある」という事実を知っただけで十分。次は、その証拠をどう確実に手に入れるかを考える番だ。

※非表示フォルダについての記事はこちら。

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