嫌な日課

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子どもを寝かしつけて、静まり返った部屋の中で、私は夫の寝息を確かめる。規則正しい呼吸が聞こえたら、そっと布団から抜け出し、枕元に置かれたスマホを手に取る。

もう何度目になるのだろう。毎晩のように繰り返している行為。最初は震える手で、心臓がバクバクして、全身がこわばっていた。でも続けていくうちに、指先だけは慣れてしまった。画面のロックを外し、どこを見ればいいかを決めて動くことができるようになった。

今日は写真フォルダを見ることにした。開く直前、いつも頭をよぎるのは同じ言葉。「私、なにしてるんだろう。」そう自問自答すると、胸の奥が苦しくなる。自分が嫌だと感じていることを、毎晩繰り返している。それでもやめることができない。調べないといけないから。

もし何もなければそれでいい。けれど、もし何かが写っていたら…。その恐怖が喉を締めつける。

フォルダを開くと、子どもとの日常、家族の笑顔、旅行の記録。普通なら安心するはずの光景。でも、私はそこに違和感を探してしまう。誰と行ったのかわからない場所、見知らぬ誰かの気配。ひとつひとつの写真を疑う目で見てしまう自分が、本当に嫌になる。

スマホを閉じて夫の寝顔を見ても、心は落ち着かない。むしろ、罪悪感と不安だけが膨らんでいく。安らぎなんてない。毎晩こうして心を削っているのに…。

「私は、どうしたいんだろう」──答えはまだ見つからないまま、また一日が過ぎていく。

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