減っていく薬——問い詰めないまま削られていく私の気持ち

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薬を見つけたとき、私は問い詰めなかった。
問い詰めることで壊れてしまうと思ったからだ。
色々なものが、何もかも。

だから、何も言わなかった。
ただ、静かに見ていた。

薬は少しずつ減っていった。
一錠ではなく、半錠ずつ。
そしてそのペースは、だいたい週に二回。

銀色のシートの切れ方を見れば分かる。
どこが残っていて、どこが使われているのか。
そんなことを確認している自分が、どこか情けなくもあった。

私との間には、もうずっと営みがない。
いつからなのか、正確には思い出せないくらい前からだ。
それなのに、薬だけは確実に減っていく。

その現実が、静かに胸をえぐった。
誰のために使われているのかなんて、考えなくても分かる。

家の中では、表面上の会話はある。
子どもの学校のこと、夕飯のこと、明日の予定。
普通の家庭のような会話をしているのに、夫はいつもどこか不機嫌だ。

ある日、財布に入っていたはずの薬がなくなっていた。
しばらくして気づいた。
車の中に移していることに。

きっと、私に見られたくないのだろう。
そう思ったとき、また胸の奥が冷たくなった。

さらに、ある朝。
夫にこう言われた。

「俺の鞄に弁当とか水筒入れるの、やめて。」

私は毎朝、当たり前のようにそれをしてきた。
でも夫は、少し不機嫌そうに言った。

「自分で入れるから。」

理由は聞かなくても分かった。
私に鞄を触られたくないのだ。

玄関のドアが閉まったあと、私はしばらくその場に立っていた。
お弁当を作ることも、水筒を用意することも、
ずっと当たり前に続けてきたことだったのに。

夫婦って、こんなふうに壊れていくんだなと思った。

大きな出来事があるわけじゃない。
ただ、小さな違和感が積み重なっていく。

薬が半錠ずつ減っていくみたいに。
気づいたときには、もう元には戻れないところまで来ている。

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