今日も夫の携帯を開く。もう何度目かわからない。
非表示フォルダに隠されていた女性の写真を、Airdropを使って自分の携帯に移した。
胸の奥がザワザワしているまま、夫の携帯を枕元にそっと戻す。
画面に保存された写真のサムネイルを見ただけでも、どれほどの量かすぐにわかった。
何十枚なんてものじゃない。おそらく百枚以上。指でスクロールしても、終わりが見えない。
──私は写真を撮られるのを昔から少し嫌がっていた。
夫の前でも、家族旅行でも、なんとなく照れくさくて。
この女性はどうだったのだろう。嫌がらず、むしろ嬉しそうに撮らせていたのだろうか。
だからこんなにも大量に残っているのか。
もし、私が「もっと撮って」と笑っていたら、違っていたのだろうか。
そんな考えが頭の中をぐるぐる駆け巡る。でも、正解はわからない。
それを確かめることも、今はできない。
隣では、子どもがすやすやと寝息を立てている。
私はその音に少し救われながらも、震える指で一枚ずつ写真を確認していった。
日付、時間、可能なら場所。探偵事務所に送るために、淡々と情報をメモしていく。
途中で、息が止まりそうになる写真が現れた。
布団をかぶっているが、明らかに裸で横たわる女性の姿。
肌の色、枕の位置、薄いシーツのシワ。すべてが“現実”を叩きつけてくる。
胸がぎゅっと縮むような痛み。吐き気が込み上げてきて、喉の奥が熱くなる。
「気持ち悪い……」心の中で何度もつぶやいた。
でも、今は泣いている場合じゃない。
これは、私たち家族の未来を守るための作業でもある。
震える手を押さえ込みながら、私は写真のデータを整理し続けた。
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