ある日、思いきって聞いてみた。
「最近、ちょっと疲れてるように見えるけど…何かあった?」
夫は少し黙って、それからぽつんと答えた。
「仕事でちょっと疲れてるんだ。レイも最近忙しそうだし。…少し寂しいなって思う」
その言葉を聞いたとき、私は素直に受け止めた。
あぁ、夫も寂しかったんだ。
私のことを気遣って、ちゃんと我慢してくれてたんだなって思った。
「そうなんだ。ごめんね。できるだけ早く帰るようにするね」
そう返すと、夫はちょっとだけ笑って、軽くうなずいた。
その瞬間、少しほっとした。
夫の寂しさに気づけてよかったって思った。
もっとちゃんと向き合おう。
話す時間、大事にしよう。そう思った。
……でも、あとになって知ることになる。
あのときの「寂しい」に、私が思っていたような深い意味なんて、なかったってことを。
あの言葉の裏にあったのは、私への思いやりでも、夫婦の関係を取り戻したいって気持ちでもなかった。
ただの言い訳。ただの、ごまかし。
そう気づいたとき、自分がどれだけ愚かだったのかを思い知らされた。
でも、そのときの私はまだ、何も知らなかった。
信じることで、自分の心を守ってたんだと思う。
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