探偵に相談するまでの心の葛藤と決断の瞬間

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仕事が忙しい中、ふと時間があいた。ちょうど定時を過ぎたところだった。退勤処理さえしてしまえば、あとは職場に残っていようと、どこに行こうと誰にも咎められない。珍しく、何も急かされない時間。でも、なぜか胸の奥はざわざわしてた。

家に帰る気になれなかった。いつもだったら、夫に連絡して「今日はお迎え行けるよ」って言うのに。「今日は早く晩御飯にできたね」って話すのに。

家の鍵を握る手に、無意識に力が入る。あったかいはずの家なのに、どこか冷たい。安心なんてなくて、むき出しの空気が漂ってる。そんな場所に帰るくらいなら、このまま椅子に沈み込んで目を閉じてた方がまだマシだと思えた。自分の気持ち次第でこんなにも家の感じ方が違うなんて…。

パソコンを閉じてスマホを手に取る。心は重い。だけど、ずっと頭の片隅にあったことがある。日常の中のふとした仕草、何気ない言葉の端、目が合ったときの温度。それが、少しずつ少しずつ変わっていった。気づかないふりをしてきた。信じたい気持ちと疑う気持ちの間で揺れてた。

決意ってほどじゃない、曖昧な衝動に押されて「探偵 浮気調査」って検索窓に打ち込んだ。すぐにいくつかの事務所が出てきた。口コミ、費用、対応時間、雰囲気。ざっと見て、自分が譲れない条件を満たしてる探偵社を直感でひとつ選ぶ。問い合わせ先にLINEのボタンがあった。指が少し震えたけど、意を決してタップする。打つ手は重かったけど送った。夫の行動を調べてほしい、と短く端的に。変換ミスを直しながら、なるべく丁寧な言葉を並べた。

送信すると、すぐに既読がついた。早い。驚くくらいだった。

「お電話可能ですか? できればLINEを使用した対面通話をお願いしたいのですが。」

画面に出た文字を見た瞬間、心臓がドクンと大きく跳ねた。急に自分の心音が大きくなったみたいで、胸の内側をざわざわした緊張が駆け上がっていく。

指先にじっとり汗がにじむ。思わずスマホを持ち替えて、深く息を吐いた。通話。顔を見て話す? 誰にも話していない事を。たとえ画面越しでも、自分の顔を見せながら夫の不倫を話すのか。夫を疑ってる自分。真実を確かめようとしてる自分。現実に向き合おうとしてる自分。その全部が、急に生々しく突きつけられた気がした。

でも、後戻りはしたくなかった。いや、もうできなかった。心のどこかで、私はすでに答えを知っていた。ただ、それを誰かの口から聞くことで、現実として認めざるを得なくなる。だからこそ、ずっと避けてきた。

けど、この瞬間、自分の中で何かが切れた。いや、切り替わったのかもしれない。

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