夫の両親と動物園へ|普段と違う“いい夫”の顔に心が冷える

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朝から快晴。
夫の両親が計画してくれていた動物園行きの日。子どもたちは朝ごはんのときからソワソワしていた。

夫はというと、自分の両親の前ではいつも通りの口調で、やけに機嫌がいい。昨日までの仏頂面が嘘みたいに、私や子どもたちに優しく話しかける。
「お前ら、早く準備しろよ〜」なんて、子どもたちを急かしつつ笑っている。お義母さんが「家族思いだねぇ」って笑えば、夫は「そうか?普通だよ」なんて照れたように返す。
その様子を横目で見ながら、私は心の中でため息をついていた。

動物園までの車の中でも、夫は両親と普通に冗談を交わしていた。普段は私との会話なんてほとんどないくせに、こういうときだけは饒舌だ。お義母さんは嬉しそうに笑っていて、その笑顔を壊したくなくて、私も笑って相づちを打つ。

動物園に着くと、子どもたちは一目散にキリンのエリアへ。長い首をゆっくり動かして葉っぱを食べる姿に、みんなで「おおー!」と声を上げた。写真を撮るときも、夫は「俺が撮るよ」とカメラを持ち、子どもたちと私をフレームに収める。まるで“家族の思い出”を大事にしている夫を演じているようで、胸の奥が冷えていく。

お昼は園内のレストランで。お義父さんが「今日は俺が払うから、好きなもの頼んで」と言ってくれて、子どもたちは大喜び。夫も「じゃあ俺はこれにする」と迷いなくメニューを選ぶ。その横顔を見ながら、私は、この人が今も不倫相手との交渉中だって事実を、この場の誰も知らないんだと思うと、現実感が薄れていった。

午後はゾウやライオン、ペンギンを見て回った。夫はずっと“いい父親”を演じ続けていた。お義母さんはそんな夫を見て嬉しそうにしていて、その姿にまた心が締め付けられる。
私は仮面を外せないまま、動物たちの檻の前を歩いていた。

帰りの車の中、子どもたちは疲れて眠ってしまった。お義母さんが「今日はありがとうね。本当に家族を大事にしてくれて嬉しいわ」と言ったとき、夫は「そんなことないって」と笑っていた。
その笑顔を見て、私は何も言えなかった。
この“いい夫”の演技が、どこまで続くんだろう。

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