写真は、百枚以上あった
今日もまた、夫のスマホを確認していた。
もう何度目なのかわからない。
前に見つけた、非表示になっていた女性の写真。
私はその内容を確認できるように記録を残した。
夫のスマホを元に戻して、自分のスマホを見る。
そこに並んでいる写真のサムネイルを見ただけで、その量の多さがわかった。
何十枚なんてものじゃない。
おそらく、百枚以上。
指でスクロールしても、
なかなか終わりが見えなかった。
こんなにあるんだ。
まず思ったのは、それだった。
私の写真は、こんなにあっただろうか
写真を見ながら、なぜか自分のことを考えた。
私は昔から、写真を撮られるのが少し苦手だった。
夫の前でもそう。
家族旅行に行っても、
なんとなく照れくさくて、積極的に撮ってほしいとは言わなかった。
じゃあ、この女性は?
写真を撮られるのが好きだったのかな。
夫にカメラを向けられて、
嫌がらなかったのかな。
むしろ、嬉しかったのかな。
だから、こんなにたくさん残っているの?
そして、考えなくてもいいことまで考え始めた。
もし私が、もっと「写真撮って」と言っていたら?
もっと夫の前で笑って、
もっと二人の写真を残していたら、
何か違っていたんだろうか。
そんなこと、今考えたって答えなんて出ない。
それでも、
相手の女性と自分を比べることを止められなかった。
一枚ずつ見るのが苦しかった
隣では、子どもがすやすやと眠っていた。
その寝息を聞きながら、
私は一枚ずつ写真を見ていった。
見るたびに胸がざわつく。
それでも、見なければと思った。
途中でやめたくなる。
でも、やめられない。
どこで撮ったんだろう。
いつなんだろう。
これは何をしていたときなんだろう。
写真を見るたび、
私の知らない夫の時間が少しずつ現れてくるようだった。
そして、
一枚の写真で指が止まった。
見た瞬間、体が固まった
女性が横になっている写真だった。
布団をかぶっているが、明らかに裸で横たわる女性の写真。
肌の色、枕の位置、薄いシーツのシワ。すべてが“現実”を叩きつけてくる。
頭の中が真っ白になった。
胸がぎゅっと縮む。
気持ち悪い。
吐き気が込み上げてきて、
喉の奥が熱くなった。
「気持ち悪い……」
心の中で何度も繰り返した。
LINEを見たときもショックだった。
非表示になっていた写真を見つけたときも、
「やっぱり」と思った。
それでも私は、
どこかに逃げ道を残していた。
ただ仲がいいだけかもしれない。
プラトニックなのかもしれない。
私が勝手に悪い方へ考えているだけかもしれない。
ずっと、
そんな可能性にしがみついていた。
でも、
目の前の写真を見ながら、
その言葉を自分に言い聞かせることが、
だんだんできなくなっていった。
それでも、子どもは隣で眠っていた
夫も眠っている。
子どもたちも眠っている。
いつもと同じ夜だった。
なのに、
私だけが、
今までとはまったく違う場所にいるような気がした。
泣きたかった。
夫を起こして、
「これは何?」
と聞きたかった。
全部吐き出してしまいたかった。
でも、
できなかった。
今ここで感情のままに動いたらダメだ。
そう自分に言い聞かせた。
震える手を押さえながら、
私はもう一度画面を見た。
「何もないのかもしれない」
そう思いたくて始めたはずだった。
でも、
私が見つけたものは、
安心できるものではなかった。
それでもこのときの私は、
まだ夫に何も聞かなかった。
聞けなかった。
真実に近づけば近づくほど、
それを夫の口から聞くことが、
怖くなっていた。
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